VOICE
卒業生からのメッセージ
第14回生後期(航空大学校 実科教官) 石田 健司
航空大学校時代の思い出
私は航空関係の学校を出たので飛行機に関する理論とか図面、構造等多少なりの知識があり、訓練期間中の座学は比較的楽であった。操縦に関しては全く無知であったが、これまで 小さい頃から自動車やバイクに乗ることが好きだったので飛行機に乗ることや操縦そのものにそんなに違和感はなかった。ただ、飛行機の騒音と古い無線機器のため雑音の入り交じったATCと交信しなければならなかったことが大変だった。その頃の宮崎空港での訓練は単発機(メンター)、双発機(H-18)と大型機(YS-11)が行っており、単発機に乗っている時期にはYS-11で訓練している先輩がまるで神様のように思えた。単発機、双発機、YS-11が宮崎空港で同時にタッチアンドゴー訓練を行いそれぞれ一周の時間差は無くうまく飛んでいたのは実に面白く感心した。
現在の仕事について
全く操縦を知らない人を教えることはまず操縦の本質を教えることである。デモ飛行や画像を通し言葉で補い説明するがなかなかその本質を理解してもらえない。『百聞は一見にしかず』と云うが技術は見てもなかなか解らないものです。特に初歩の学生に対して教官の言葉の意味と学生が理解している意味とは必ずしも一致しないことが多いのです。操縦にはその人の考えや意志が反映され、結果として飛行機の姿勢や高度計、速度計また運航に反映されます。そこから、教官はこれらを分析し教えられた内容の何が理解され何が記憶されているのかいないのかを判断します。解らなかったこと記憶してないことを再度教えることになるが、これがなかなか教官にとって難しい。動いている景色の何を見てどう判断するのか、状況に応じてどの様な点に気を配り判断すべきかを言葉で現すのは大変なことである。だから、学生は教えられた知識と経験した事柄を理解し記憶し判断することを少しずつ出来るようにしてもらうしかない。根気のいる仕事だと思う。
どんな人がパイロットに向いているのか?
なんでもそうですが最初から出来る人はいません。出来る人と出来ない人の差は知識の差だけです。知識は良く理解し記憶すれば問題ないのです。ただ今までの勉強と少し違うのは理論だけではなく具体的な知識が重要になります。具体的な知識とはその時必要な情報を入手し正しく判断し実行に移せる知識と云うことになります。正しい知識は正しい判断につながります。曖昧な知識は曖昧な判断になり、知識がなければ判断出来ないことになります。したがって正しい知識しか役に立ちません。たくさんのことを正しく理解し覚えることは直ぐには出来ません。航大では2年間かけて毎日少しずつ知識を身に付けることになります。一夜漬けは全く通用しません。この様に根気のある人、基礎知識をもった探求心のある人であれば成功する可能性は非常に高いと思います。
受験生へのメッセージ
今いる学校の勉強はしっかりとやるべきです。この科目は航大に入っても、パイロットになってもどうせ役に立たないから適当にしておこうという考えの学生が過去にいました。このような考えを持っていた学生はほとんど良い成績で推移していませんでした。基礎的な知識や研究心、探求の方法が身に付いていなかったのではないかと思われます。このような人が航大に来ても直ぐにへばってしまうとか論理的な思考が出来ないとか問題がでてくるように思います。ですから、今持っている課題は全力で解決に向かってください。どんな事でも航大に入ってからきっと役に立つと思います。